企業と顧客を繋ぐコミュニケーション

ブランディング戦略が企業に与える好影響は計り知れません。ただし、 ブランディング戦略を表面化するコンテンツ制作の設計・運用の両面においては、その実行のコツがあります。まず、企業にとってブランド戦略がいかに重要な要素かということと、それを表面化するコンテンツ制作のコツについて解説していきましょう。

企業活動におけるブランド戦略の重要性

企業活動におけるブランド戦略の重要性

ブランディング戦略は、表面的なマーケティング戦略とは本質的に異なります。認知レベルのマーケティングを繰り返すだけでなく、顧客となるべきマーケット層のニーズの本質を理解し、そこに提供できる企業情報や価値を伝えることになります。こういった状態を作ることが出来れば、営業努力は最小限化、もしくは必要とされなくなり、主事業の推進やサービスの開発に邁進することができます。

また、時間が経つにつれて、構築したコミュニケーションは醸成され、顧客への認知度と親密度は深まっていきます。このような状態が作り出されれば、必然的に、営業力の向上が見込まれるわけです。

また、営業コストのほとんどは、消費者に対して、自社の製品やサービスの説明、他社と比較した時に、なぜその商材を購入し、使わなければいけないかという販売促進活動に充てられます。

ブランド戦略に基づく正確なアウトプットの存在により、お客様とのコミュニケーションにおける無駄な時間など、営業マンが使うべきコストが低減されます。

「毎回同じようなコミュニケーションに時間を費やしている」というのは、そもそもからして正社員のモチベーションを低減する根本的な課題にあたります。

また、社員は、淡々と商品をセールスすることでモチベーションを感じられる人材がすべてではありません。また、会社としても、そういった作業よりも、営業における情報収集をもとに、営業分析や新商品開発、価格の決定、お客様のニーズに応えるための体制づくりなど、企業の本質的な価値に切り込んだ仕事を行った方がよいでしょう。

ブランディングの欠如はコストパフォーマンスを悪化させる

ブランド戦略とコストの関係性

また、ブランド戦略をないがしろにしていると、人材とのミスマッチが生じることは言うまでもありません。もちろん、雇用に関する基本的な条件という意味ではなく、本質的に、会社の大義名分やイメージ、そのサービスを作った根幹や理念、またビジネス的な経済合理性という情報をもとに企業に接触してきてくれる人材とのマッチングは極めて有用なものになります。

以上のことからわかる通り、一度ブランド戦略を策定し、それを高めることは、多くの企業の経営にとって有用なものになるのです。

特にデジタル領域におけるリーチポイントの選定などにおける商材は多いものの、それはあくまで一義的なものであり、また広告という手法自体に対するエンドユーザーの認知度、理解度も高まっている状態です。エンドユーザーは、自分で探して、自分で見つける、そして自分で選ぶということに重点を置いているのです。

コミュニケーションに単一的な正解はない

コミュニケーションの正解

また、デジタル領域と対人領域の関係性は、営業上多くの場合、一つで語られます。デジタル領域で語られるべき内容と、対人領域で語られるべき内容に大きな違いや、根本的な経営・営業方針が分裂している場合、それはブランド戦略として大きな壁を自ら作り出してしまうというわけです。

ただ、これには、「担当している部署が違う」という組織的な問題もあるかと思います。デジタルマーケティングを担当し、その領域を基本としたKPIを持たされている場合、紙媒体とのコミュニケーション的な整合性を合わせるという作業は、業務の優先順位としては高くないでしょう。

その逆もしかり、デジタル領域でのコミュニケーション手法を意識した営業資料では、顧客に訴求しない、などということももちろんあります。ただ、それらの意識を合わせるのが、経営陣であり、マーケティング&コミュニケーションに関連する部署業務なのです。

上記のようなことを考慮し、ブランド戦略を策定していくわけですが、企業のコミュニケーションの本質的なこととは、「多様性に基づいた会社の存在意義」ということを前提に考えるべきということです。

つまり、コミュニケーションに単一的な正解はない、ということを前提にすべきということです。コンサルティング業界では、あらゆるものを整理し、類型化します。もちろん当社の基本サービスも基本的なフレームワークに則りコンサルティングを行いますが、その根幹にあるのは、「型にはめ込むためのコンサルティングではない」ということです。

企業のコミュニケーションの方法は、あらゆる方面にその正解を孕んでいます。「こうあるべき」という前提に立たず「多様性」を前提にしたコミュニケーション手法が重要と考えます。高度経済成長期以降、近しい価値観により運営されてきた「カイシャ」というもの。しかし我々は「訴求すべきマーケットに対して、訴求すべき商材を伝えるだけ」で基本的にはコミュニケーションは完了すると考えています。

上記のことを明確に考慮した時に、「持続可能なコミュニケーション」戦略が作り出されるのです。貫くべきものを貫き、いらない情報(ノイズ)は排除する。それだけで、企業の情報整理は完了するのです。

企業経営者が営業を考える際に、最も重要な項目は、営業マンの意識改革と、利用される、すべき項目のPDCAサイクルの回転の必要性と、それに伴う改善・改修フローです。MAツールなどもこの部分に含まれます。

以上のような項目を用い、企業コミュニケーションを最適化していくことで、企業は、「磁石」を持つことが出来るようになります。その磁石とは、働き手や顧客などを呼び寄せる大きな力を持つのです。

企業ブランド戦略の立て方

企業ブランド戦略の立て方

ブランド戦略という言葉の定義は様々ですが、当社においては、「エンドクライアントに対するすべてのタッチポイントを整理し、その伝え方を設計する」ことを指します。まず、企業ブランド戦略を表面化するコンテンツ設計において最も重要なことは、以下の5つです。

  • なぜ
  • 誰に
  • 何を
  • どこで
  • どのように

それぞれを説明していきましょう。

「なぜ」を明確化する

まずは「なぜ」ですが、マーケティング施策は基本的に各論ベースのモノが多く、顧客に知ってもらいたい、顧客のナーチャリングを取りたい、という風に、KPIが先走りしてしまうと、「なぜ、本来的にそのマーケティングを行わなければならないのか」という目的を失ってしまうことになりかねません。

そもそも、企業には、経営者が目指すべき目的があります。それは例えば、社会的な大義であったり、経済事情であったり、自身のプライドに紐づいていたりなど、あらゆる理由がありますが、ともあれ、企業にはゴールとしての「進むべき方向」があるはずです。それを見つけ出す必要があるのです。

それを見つけ出す具体的な作業として、当コンサルティングパッケージでは「定性調査」と「定量調査」を前提としています。定性調査は、主にはコンサルタントによる、経営者を含んだステークホルダーに対するインタビューの実施により行います。

定性調査・定量調査
  • 経営計画を基に、企業の「想い」と「進むべき道」をヒアリング。客観的な観点で「らしさ」を導出する。
  • 既存の顧客・ユーザーをランダムピックアップ。ヒアリングし、さらなるウォンツや「なぜ、他社ではなくキャプランを選んだか」を導出する。
  • 競合他社の顧客・サービスに関するヒアリングなどを行い、差別化を実施していく。

1カ月中に、3~4回ほどのセッションを用いてヒアリングしていき、会社の方向性の主だった方針を選定していきます。また、以下は例ですが、定量調査として以下のような作業を含んでいきます。

  • 現状の顧客獲得状況と、経営方針に基づき、進むべき道を明確化する。
  • 競合他社の経営方針、またマーケティング戦略などを調査し、御社の差分を導き出す。
  • 人材業界のトレンド・景気を調査し、想定される市場を正確に可視化する。
  • 想定されるターゲットのペルソナを調査し、コンテンツ設計を具現化する。

これらの情報を基に、企業ブランド戦略の根幹となる「なぜ」を作り上げていきます。具体的なアウトプットとしては、以下のようなものになります。

「誰に」を明確化する

「誰に」とは、いわゆるペルソナ設定です。「なぜ」のビジネスゴールを考慮し、対象とすべきマーケットとその中にいるペルソナの設定を行います。まず、訴求すべき企業やエンドクライアントを定義し、それに対して訴求すべき「属性」と「深度」を定義します。基本的に、「会社」それ自体の位置づけを行います。また、商材の場合は、再定義します。

「何を?」を明確化する

企業が訴求すべき、本質的なことは多くありません。それを見つけ出すための 「何を?」を明確化する作業は、基本的に「なぜ」の作業に基づく取捨選択的な作業であり、「編集的」といえるでしょう。これが設定されれば、多くの部分に無駄にコミュニケートする必要がなくなるため、コミュニケーション上の問題は少なくなります。

「どこで」を明確化する

タッチポイントとなるメディアの再設計を行います。全体として利用できるメディア全量を抽出、制定し、その後、具体的なページレイアウト・デザインなどの設計を行っていきます。この時点で、例えばデジタル上にコンテンツマーケティングが必要なのか、オウンドメディアが必要なのか、というような各論になっていきます。それぞれのメディアの性質と想定される効果を考慮し、「どこで」訴求すべきかということを明確にしていきます。

コンテンツレイアウトの設計方法

「どのように」を明確化する

「どのように」の方針として重要なことは、「訴求すべき内容の最適化」と「コンテンツのレイアウトや文体選定」などです。レイアウトまで決定した後は、訴求対象・項目より抽出された記事タイプそれぞれに対して制作ルールを策定しています。ルールをもとにしたライティングにより、執筆者の手癖や文体の差を減少させます。

ブランド戦略上の「地図」を作り上げる

上記のことが出来上がった時点で、ブランド戦略の設計書が出来上がります。これがつまりは、企業ブランド戦略上の「地図」です。おそらくここまで読んでいただいた方にはお分かりいただけるかと思いますが、ブランド戦略を作り上げるということはつまり、通常の経営コンサルティングに近い「コアの導出」「マーケットの選定」などの作業を含んでいるのです。「気づき」に満ち、情報の取捨選択を検討するコストを省くことで、会社の営業力・ブランド力などが高くなっていきます。

「気づき」に満ち、情報の取捨選択を検討するコストを省くことで、会社の営業力・ブランド力などが高くなっていきます。

ブランド戦略がないと、必然的に企業の商品・サービスは画一的なものに収束していってしまいます。多様化する世界の中で、企業はむしろ「自社だけのマーケット」に向けてコミュニケートしていくべきだと考えます。それを実現するのがブランド戦略なのです。



Appleに学ぶブランディング戦略

しかし、ブランドの構築は一朝一夕に成しえるものではなく、地道な企業努力の積み重ねが必要です。以下に、世界で最もコーポレートブランディングに成功した企業の一つであろうApple社のブランド構築を分析してみます。

Apple社に学ぶブランド戦略 

そもそも、ブランドとは、自社の商品やサービスを、他社のそれらと区別するための考え方を指します。ブランドのマネジメントは、経営そのものと言ってもいいでしょう。経営者の伝えたい思いを、顧客との接点である商品デザインに込めて、顧客とコミュニケーションを取る行動が、コーポレートブランディングの基本です。

Apple社のブランディングの歴史は、多くの示唆に富んでいます。かつては、Apple社の新製品の発売日には、ショップの前に前夜から人々が行列をなすのは見慣れた光景でした。東京を始めとした各地の家電量販店のApple製品を売る一画は、そのエリアだけが独特の世界観を醸し出し、熱狂的なファン層を形成しています。

このような現象は、偶然によるものでしょうか。最新機能を、洗練されたシンプルなデザインの筐体で包んだiPhoneは、感性に訴える「マルチタッチ」で多くのユーザーの心をつかみました。機能とユーザーインターフェイスとの最適な融合を目指した結果、「Apple製品」という言葉は、市場において確かな優位性を確立したと言えるでしょう。

ユーザーの感性に訴えるデザイン

ユーザーの感性に訴えるデザイン

Apple社を創業・再建した故スティーブ・ジョブズ氏は1997年にCEOとして同社に復帰しました。当時、Apple社は業績悪化のため、彼は打開策を模索していましたが、復帰後、最初の会議で社員たちにこう指摘しました。

「プロダクト(製品)が最悪なんだよ。ちっとも、セクシーじゃない!」

彼はデザインを、単なる差別化の手段とは捉えていませんでした。デザインする際に重要なことは、「ユーザーが製品を使用してどう感じるか」であると主張しました。iMacの開発時には、市場シェアや処理速度にこだわるのではなく、ユーザーがその商品に触れた時、どう感じるかにウェイトを置きました。

また、iPhoneのデザインを行った際には、「湖からディスプレイが浮かび上がってくる」というイメージから、ディスプレイを重要視するクリエイティブ・プロダクトデザインが生まれたといいます。

このように、ユーザーの感性や感情に直接訴えるデザインは、Apple社のブランディングに大きな役割を果たしたと言えるでしょう。シンプルさをデザインコンセプトの中心に置いたのです。シンプルだからこそ仕事で利用しやすく、あらゆる年代層にも受け入れられやすい、という考え方に基づいているのです。

Apple社に見るマーケティング戦略

Apple社に見るマーケティング戦略

マーケティングには、「4P理論」と呼ばれる考え方があります。 4Pとは、下記の4つの頭文字を取ったものです。

  1. 顧客に提供する商品やサービスを作り出すこと。
  2. どのような手段と経路で、商品を顧客に届けるか。
  3. 商品の存在や特徴を、ユーザーにどのように伝えるか。
  4. 価格をどう設定するか。

Apple社はこの4P理論を踏まえ、独自の戦略を展開しました。

4Pとは、下記の4つの頭文字を取ったものです。 顧客に提供する商品やサービスを作り出すこと。どのような手段と経路で、商品を顧客に届けるか。商品の存在や特徴を、ユーザーにどのように伝えるか。価格をどう設定するか。Apple社はこの4P理論を踏まえ、独自の戦略を展開しました。

まず商品(Product)においては、今までにはない、感覚的な操作性を追求したインターフェイスを搭載しました。次に流通(Place)では、アップルストアにおける優先販売を行ったほか、iTunesStoreのみでコンテンツを販売するなどの手法を取りました。そして価格(Price)は、世界統一価格とし、通信定額制プランを標準で採用したのです。

最後にプロモーションですが、以前、Apple社は、iMacやPowerBookG3などの新製品を市場にリリースした際、「Think Different」というキャッチコピーとともにキャンペーンをはりました。コピーが意味するのは、「固定観念を壊し、新しい発想でコンピュータを使用する」ことでした。

イメージキャラクターには、アインシュタインやピカソ、ガンジーなどの時代の先駆者の画像が使われました。その後も、iPhoneやiPadなどが市場投入されると、「ハード」、「ソフト」、「サービス」の3つの要因が相乗効果で働くことになりました。その背景には、緻密なマーケティング戦略が存在したのです。

Apple社がブランディングに成功し熱烈なユーザーを獲得した裏には、ユーザーの感性に訴えかけるデザインと、考え抜かれたマーケティング戦略がありました。また、製品だけではなく、パッケージ(包装)デザインにもこだわりを見せ、Apple社製品を取得すること自体に高揚感を持たせる演出も成功しました。

最新機能にデザイン性を持たせることにより、「機能とインターフェイスとの最適な統合」という明確なコンセプトを打ち出し、ゆるぎないブランドを作り上げたのです。

まとめ

Apple社のブランド戦略、いかがでしたでしょうか。私たちの多くは、Apple社が作り上げたパソコンやiPhoneなどという革新的なツールの恩恵を受けて生きているといっても過言ではないと思います。私たちは、プロダクト自体だけでなく、その開発ストーリーや、故スティーブ・ジョブズの哲学・アイデンティティに惹かれているのかもしれませんね。

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