出版と聞くと、所せましと書籍が並ぶ書店の風景を思い浮かべる方は多いでしょう。これらの書籍はおもに、出版社が企画・制作したものがほとんどで、この出版の形態を「商業出版」と呼びます。
これに対して、「企業出版」という形態があります。企業出版は、企業の広報活動の一環であり、企業の価値を高める方法として注目を集めています。今回は、企業出版がどのようなものか、分かりやすく説明します。
目次
企業価値向上のために
企業出版は、自社のブランドをさらに高めるため、あるいは企業における課題解決のために行われる手法です。商業出版では、書籍を売って収益を上げることが目的ですが、企業出版のゴールはそこにはありません。
企業出版のゴールは、企業の認知度の向上、商品・サービスの周知、競合他社との差別化、集客率アップ、営業活動における新規開拓、人材の採用・育成と様々です。現在、会社が直面している課題をカスタムし、本の力で解決に導くのが目的です。
企業出版は、金融系やIT系、不動産、美容・健康系、士業などあらゆる業種に対応できます。企業出版の特徴は、以下の通りです。
情報を集約・整理できる
企業の創業理念やこれまで歩んできた足跡、事業内容を一冊の本に集約することで情報の整理ができます。また編集者など、外部の客観的な視点が入ることで、自社内では気にもとめないことが、新たな魅力や価値として生まれ変わることもあります。
社員への理念の浸透と採用支援
企業経営において、ビジョンや経営方針はとても重要です。しかし、事業規模が大きくなるほど、全社員に浸透させることは難しくなります。よく、社長室に額に入った社是を目にしますが、あまりに抽象的で、ほこりをかぶってしまっているのが現状です。
その点、企業出版であれば、トップがかかげる企業理念をストーリー仕立てで編集し本にまとめることが可能です。これなら、社員一人一人が簡単に理解できますし、企業へのロイヤリティの向上にもつながります。また人事採用においては、自社の企業理念に共鳴した人材を集めやすくなるなどの効果も期待できます。
ロングスパンでの活用ができる
企業出版というものは、書籍を作っておしまい、というものではありません。テレビCMや新聞・雑誌広告、WEB広告のような単発での情報発信とは違い、本は寿命の長いメディアです。時には出版してから、何年も経ってから反響が表れるということもあるのです。
企業出版のメリット
ここからは、企業出版を行うことでどのようなメリットがあるか、見てみましょう。
テレビCMや新聞広告はもちろん、インターネット広告やSNS 、WEBコンテンツなど、企業が消費者に情報発信する手段は格段に増えました。情報の拡散力や、ピンポイントにターゲットに働きかけることにかけては、これらのメディアは有力です。しかしマスメディアやネットにおいて情報があふれ、発信するそばから消えていく現状では、企業のメッセージをじっくり語ることはできません。
その点企業出版では、企業が伝えたい情報はすべて、体型的に一冊の本にまとめられています。盛りこまれる情報量は、他のメディアの比ではありません。これにより、本を手に取る者に重厚感と信頼感をあたえます。そして、以下の3つの効果があげられます。
企業の認知度がアップ
商業出版と同じく、企業出版による書籍が書店に並ぶことで、企業の認知度は確実にアップするでしょう。また書店はもともと、情報に対して感度のよいビジネスマンなどが集まりやすい場所でもあります。
大型書店では、カテゴリーごとに売り場や書棚が整理されていて、自分から情報を求めてくる人を目当ての本まで導いてくれます。ターゲットとする読者に自発的に本を手に取ってもらい、内容に共感してもらうことが可能です。これは他のマス媒体では得られない、PR効果といえるでしょう。
自社への信頼性を高める
「書籍を出版した」ということ自体が、その企業に対する信頼性を高めるのです。企業は読者に対し、その分野における「プロフェッショナル」という、洗練されたイメージを与えることができます。
PR効果の連鎖
企業出版による書籍は、それ自体、広報・広告効果がありますが、テレビや新聞、ネットニュースなど、他のメディアで取り上げられることもあります。企業出版をきっかけに、自社への関心は高まり、PR効果は連鎖反応を起こすこともあるのです。
デファクトコミュニケーションズの[出版ブランドコンサルティングサービス」はこちら |
企業出版の成功事例
では実際に、企業出版はどのように活用されているのか、事例をご紹介しましょう。
不動産投資会社の成功事例
野村不動産株式会社様は、新規の顧客獲得が課題でした。主催するセミナーへの集客のため、自社のホームページでの告知や新聞広告の出稿を行っていましたが、あまり効果はありませんでした。
また潜在顧客へリーチする方法を、探してもいました。そんな折、企業出版という手法に注目しました。自社のサービスや過去の実績を、新しい切り口で書籍にまとめたのです。書店での発売後、出版記念セミナーを開催すると会場は満席となりました。書籍出版により、セミナーの集客拡大と見込み客の獲得を同時に達成できました。
大手食品メーカーの成功事例
数万人の従業員数を抱える大手食品メーカーの味の素株式会社様は、社員教育や企業理念の浸透において課題に直面していました。また事業買収の直後ということもあり、全社員が一丸となって同じ方向に進む必要がありました。そこで企業出版による、書籍の制作に乗り出したのです。
プロのライターが経営トップから、創業当時の苦労話などを聞き取り、ストーリーにしました。同時に年表を配して社史を作り、自社の歴史を分かりやすくまとめました。これによりA社は、社員の離職率を低くおさえることに成功し、書籍は新入社員教育のテキストとしても活用されています。
企業出版は企業の抱える課題解決に貢献
企業出版について、ご理解いただけたでしょうか。企業のブランディングを強化するほかにも、売上・集客のアップ、リードの獲得、人材採用における支援、社員のロイヤリティの向上など、その企業が抱える課題の解決に大きく貢献します。
「企業出版」に関する他記事はこちらよりご覧ください。