GDP

GDP(grossdomesticproduct)は、日本語で、国内総生産のこと。つまり、「国内で生産されたモノやサービスの価値」のことです。GDPは経済指標の代表格のように認識され、相場に影響を与えるのは、この数値が、その国の「景気動向」を直接的にイメージさせるからです。基本的なシナリオとしては、「GDP成長率が低い→景気が悪い→通貨下落」、「GDP成長率が高い→景気がいい→通貨上昇」というシンプルなものです。また、GDPからは副次的に金利動向の予想も立てられます。GDPが悪く、その国の今後の経済の悪化が予想される場合は、金利の下落シナリオが作られ、その国の通貨の下落を予想できたりします。

ちなみに、GDPには4半期ごとに発表されます。つまり調査の対象となるのは直前の三か月のみ。ただ、米国などにおいては、GDPは三種類に分かれています。それは「速報値」「改定値」「確定値」です。読んで字の如く、速報値が一番早く、そのあとの調査の結果に改定がなされたのが「改定値」、最終的な数字が「確定値」です。経済学的には確定値が最も重要になりますが、相場にとっていちばんインパクトを与える値は「速報値」です。速報値と確定値はそこまでの誤差はありませんが、過度に上方・下方修正された際には再度相場にインパクトを与えると考え、注意が必要でしょう。

ただ実際問題、GDP成長率と為替相場を中長期的な視点で眺めると、関連性があるとも言いきれません。中長期的と言うよりも、速報値が出たときの短期的なインパクトを重要視する方がいいでしょう。テクニックとしては、もし日本のGDPが良ければ、円買いドル売りが短期的に先行すると踏んで、まずその流れに乗る。そして、短期的なテクニカル分析を用いて、下落が始まると思われるポイントで売る。また、そこで新たに売り建てるとさらに利益獲得チャンスが広がります。

景況感指数

「景況感指数」とは、景気の先行きに対して、人々がどう思っているかを指数化したものです。

米国の指標として注目される景況感系指数は二つ、①「コンファレンス・ボード消費者信頼感指数」②「ミシガン大学消費者景況感指数」です。①は政府調査の公的な指標ですが、②も市場に影響の強い指標です。

ちなみに、日本では「日銀短観」がこれに該当します。日銀短観は、「良い」「さほど良くない」「悪い」の選択肢の中から回答を選ぶ形式になっていて、三月、六月、九月、十二月の年四回発表されます。GDPなどに比べ、集計から発表までのタイムスパンが1か月と短く、速報性に長けているため、突発的な相場材料になります。

また、景気以外にも、製品需要・在庫・設備投資計画などこまかな資料が提出されるため、日本の景気を測るうえでもっとも重要視される指標です。ちなみに、海外でも「TANKAN」という名称でマーケット参加者に注目されています。

貿易収支

貿易収支とは、言葉通り「その国が貿易でどれだけ儲けているか」という経済指標です。もちろん貿易収支が黒字であれば、単純に「その国は景気がいい」ということで通貨が買われます。また、輸出額が黒字の場合はこう考えられます。日本の企業が国内で製品を作ってアメリカに輸出し、米ドルを得る。ただ、日本の企業は、ランニングコスト(従業員の給料や、これから製品を生成するためのコストなど)を日本円で支払わなければいけない。ということは、ドルを円に買い替える必要があり、総体的に「円高ドル安」になるのではないか、というふうに。

ちなみに、貿易収支の中には、「貿易・サービス収支」「所得収支」「経常移転収支」の3項目があります。「貿易・サービス収支」は、自動車やパソコンなどの輸出入や旅行などを始め、通信、建設、保険、金融関係などが含まれます。つまり、海外からの旅行者が多くなり、日本に多くの外貨を落としてくれると、この欄の黒字は増すわけですね。

ところで「米国の双子の赤字」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ここでいう双子とは、貿易収支が含まれる「経常収支」と「財政収支」です。米国は2002年頃から現在に至るまで両方の収支が赤字になっており、赤字が続いているのです。ということは、米国の貿易額が赤字になっていたからと言って、投資家は単純に「ドルを売ればいい」という考えを持ってはいけません。問題は、前回の発表に比べ、「どれほど改善されたか・落ち込んだか」を知ることです。また、他の経済指標と変わりなく、事前予想が流れますので、その数値からのかい離なども検討材料としましょう。

ただ、大前提的に、米国の財政赤字は、同国のGDPのおよそ13%程度。市場に注目されるスタンダードな経済指標とはいえ、ドルに対するインパクトは短期的・限定的になります。

雇用統計

雇用統計は各国の雇用状況を数値化した経済統計です。特に為替市場の注目を集める雇用統計が、米国の「米雇用統計」。米国は、世界のGDPの約30%を占めています(2008年時点)。そして米国のGDPの約70%が個人消費です。つまり、米国の雇用の悪化は「米国の個人消費の悪化→景気減速→世界経済の減速→投資家のリスク許容度の悪化」というサイクルを作り出すのです。同統計は「失業率」や「製造業就業者数」など10数項目に分かれていますが、その中でも短期的に意識されるのが「非農業部門雇用者数」です。非農業者部門とは、その言葉通り、農業以外の部門に属する事業者の給与支払い帳簿を元に雇用者数を統計したもの。前月比が基本です。事前予想と見比べながら、短期的な上昇・下落を予想し、数十分から数日のスパンで取引を終了させるのが妥当でしょう。

「『失業率』の方が分かりやすい」と思われる方もいるでしょうが、「失業率」は景気の動きと若干タイムラグがあります。景気が悪くなってすぐに解雇される人は少ないので、「解雇→失業」という流れには時間がかかるんですね。ですので、短期的な相場材料にはなりません。どちらかというと、失業率はその国の金融政策に大きな影響を与えます。失業率が急増したりすると、金利を含む経済政策の変更があるのでは、と考えをめぐらすのが得策です。

消費者物価指数

消費者物価指数というのは、モノやサービスの価格が上昇したか、また下降したかを示すもので、指数で示されます。これによって、その国の現在のインフレ率を測ることができます。以前記した通り、インフレ率が高まるということは、通貨価値が総体的に下がるということなので、政府は利上げして市場に出回るお金の量を減らし、通貨価値を上げようとします。お金の量が以前よりも少なくなったら、必然的に通貨価値は高まりますからね。また、金利の上昇はその国を好景気に見せかけることから、その国の通貨を上昇させる傾向があります。

反対に、インフレ率が低下すると政府は利下げをして通貨価値を上昇させ、また景気を上昇させようとします。金利の低下は、「景気を上昇させようとする努力」とみなされるので、「今は経済が悪化しているんだな」と認識され、その国の通貨は売られることになります。

なお、米国の消費者物価指数には、「総合全体指数」と、食品とエネルギーの割合を抜いた「コア指数」があります。これは「コア指数」のほうが相場に影響を与えます。前述したFRBやFOMCの金融政策会合においても、この数値が参考にされています。

ただ、前述のシナリオは、あくまで一つの事例です。たとえば、米国においてインフレ懸念それ自体が経済の圧迫材料になっていると考えられている時は、コア指数が上昇し、インフレ懸念が台頭すると、それだけでドルが売られたり、反対に、コア指数が下落して、インフレ懸念が後退すると、ドルが買われたりもします。市場の視点、市場の問題点がどこにあるのかを確認しながら見ていかないと、結構騙されやすい指標です。

製造業指数

実体経済の勢いを知る経済指標に、製造業指数というものがあります。

注目は米国の「ISM製造業景況感指数」。これは「全米供給管理協会」というところが同国の製造業の購買・供給管理の専門家400人以上にアンケートを行い、様々な調査項目に対して、一か月前よりも「良くなっている」「同程度」「悪くなっている」の3つの選択肢の中から選ばせ、集計した結果を発表したものですが、これは実際の景気に先行した結果が出ると言われています。このような先行指標は、トレンドの転換を示唆するケースが多いため、相場に強く影響を与えます。特に、ISM製造業景況感指数に関して言えば、時期的にも、主要経済指標の中で一番早く発表されるため、さらに注目度は高まります。

また、この景況感指数は米連邦準備理事会(FRB)の金利政策にも大きな影響を及ぼしています。実際、ISMが50%を下回った時には、米国は一度も利上げをしていませんし、50%を大きく上回った際には、利上げで金融引き締めを行うケースが多く見られるため、先行きを占う有効な指標です。

住宅系指標

住宅系指標も経済の良し悪しを強く反映するファクターです。なぜなら、住宅はそれ自体の購入資金が高いという理由のほか、住宅投資が活発化すると、それに付随して家具や電気製品など、総合的な消費が喚起されるからです。種類としては各国の、住宅着工件数、建設許可件数、新築住宅販売件数、中古住宅販売件数などに注目ですが、たいてい製造業系指数などと同様に、先行指標の意味合いを含んでおり、投資家はそこからトレンド転換を見極めようとします。

また、金利と住宅には強い関係があります。住宅をキャッシュで買う人はなかなかいませんよね。ローンを組みます。銀行からお金を借りるわけですから、家を買う人はみな銀行の金利を気にします。金利が低いときに家を買った方が得なので、一般的には「金利が低い→住宅系指標が伸びる→景気が拡大する」というシナリオとなります。反対に「金利が高い→住宅系指標の低下→景気悪化」というシナリオもあります。

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