1つの情報はあくまでも「点」です。ですから、この情報を撚り合わせて「線」にする作業が必要となってきます。
フラッシュニュースのような情報では特にその傾向が強いのですが、これらは単体では何の役にも立たない「素材」です。
例えば、「為替が1ドル90円から91円になりました」という情報をあなたが入手したとしましょう。しかし、これはあくまでもただの事実に過ぎません。この情報を使ってポジションを取ることは出来ないはずです。
しかし、これをあるカテゴリのニュースとして分類、整理しておいたとします。関連するニュースも同じように集めていきます。これが1ヵ月、1年という長期的なスパンになると、どのような時にこういう傾向になるのかという事や、どのように備えれば勝てるのか、といったことが読み取れるようになってくるのです。
このように、1つでは役に立たない「点」にしか過ぎなかった情報も、しっかりと分類していくことで投資に勝つために必要な「線」の情報へと昇華させることができます。
想像力を鍛えよう
例えば、「アメリカがシリアへ攻撃を仕掛ける」というニュースが世間を賑わせていますね。確かに深刻な問題です。また、個人的に複雑な思いを抱くこともあるかもしれません。ですが、情報の用途を「投資」に立ち返らせた場合、このような「素材」の状態では、投資にとって意味を為さないのです。
しかし、アメリカの軍事介入に関連する情報として、イラク介入の時の相場の動きやニュースの流れを自分の頭の中に持っていた場合は別です。この2つが類似例として、物語を作る上でのキーポイントとなるのです。
このように「線の情報」を自分で作れることで、自分の持つポジションに「カン」ではなく「自信」を持てるようになるというのが最大のメリットです。一方、不完全な情報(点)だけを頼りに投資をしていると、自分の読みとは真逆の方へマーケットが動いた時など、踏ん張りどころで不安定になってしまいがちなのです。
では、「線」の情報を撚り合わせるためにはどうしたら良いのでしょうか。 時間はかかりますが、自分で想像力を鍛えていくしか方法はありません。情報(点)と情報(点)をつなぎ合わせることで、1つの将来予測や理論、物語などを作るわけですから、最初はとても難しいはず。
「急がば回れ」ということわざにもある通り、しかし、それでも諦めずに、自分の「想像力」を磨いていくことが、結果的に早く「勝ち」をつかむためには大切なのです。
「検索」するときは『最低3つの種類のメディア』を使うこと
鮮度の高い情報を得ることが必要とされる投資において、インターネットのフラッシュニュースを活用している方も多いでしょう。
しかし、その時にメディアを1つに絞るのは危険です。
これまでも述べてきましたが、自分で直接得た「生」の情報以外には、その語り部による何らかの「バイアス」がかかっているからです。
「1人」の意見を鵜呑みにしない
基本的に、フラッシュニュースの数字などに間違いがあることはほとんどありません。この点について疑う必要はないでしょう。
気をつけたいのは、数字ではなく、経済予測やコラムなどです。とある事象に関するシナリオは、「嘘」や「バイアス」がまじって当然のもの。人によって意見が違います。ポジティブな意見やネガティブな意見。保守的なものもあれば、ラディカルなものもあります。
ですから、基本的に、シナリオトークは1人の人の意見を鵜呑みにしないことが重要なのです。
メディアによって編集理念が違う
また、メディアによる傾向にも気をつけましょう。
ひと口にメディアと言っても、各媒体によって編集理念は異なるもの。同じニュースを扱っていても、朝日新聞と日経新聞では捉え方が違いますよね。そのような点に着目し、1つの情報を過信しないことが大切です。
たとえば、シリアへの軍事介入についての記事があったとします。アメリカが攻撃するという点については、各社とも明らかに編集方針が違ってくるはず。アメリカが好きなメディアはより好意的に、アメリカが嫌いなメディアはより否定的に報道する傾向があるのです。
フラッシュニュースを読み解く方法
私の場合は、まず信憑性を確かめるため、「トムソン・ロイター」や「ブルームバーグ」で情報を確認します。次に、バイアスが最も低く、分かりやすい「NHK」、そして日経新聞、や朝日新聞、読売新聞という具合にニュースを複数見ていきます。なお、可能であればCNNやABCなど海外のニュースソースを使うとよりバイアスが軽減されます。
なお、このような情報は毎日チェックすることが肝心です。ですから、より見やすくするためには「お気に入り」や「RSSリーダー」などに、各メディアを入れておき、すぐにアクセスしておくと良いでしょう。
3つ以上のメディアの意見を知る
このように、「1人」あるいは「1つのメディア」の言うことをそのまま聞いてしまうのは危険です。最低でも3つ以上、編集方針の異なるメディアの情報を得ることができれば、「あのメディアではこう言っていたが、このメディアでは逆の切り口で見ている」というようなことが読み取れます。アプローチの違いによって、報道もまた変化してくるということが分かってくるのです。
これまでお話ししてきた「メディアリテラシー」を高めるためにもとても大切なことです。投資に勝つためには、「100%正しく、中立的な情報などない」という大前提を、あらためて把握することが重要です。
「相場は常に正しい」と考える
投資を行なっていく過程で、不合理なものを目にする機会は多いです。世界は常に美しく、優しく、綺麗だという考えであれば、まずマーケットの中で勝ち続けることは出来ません。毎日のように、思惑にまみれたノイズのようなものを見かけます。
インサイダー取引とは
会社関係者などが、その会社の株価変動に関わる重要な事実を、それが「公表される前」に特定の人物に知らせ、株を買わせることです。
たとえば、その銘柄にとってマイナスの情報を入手したとしましょう。この場合は、株価が下がる前に売却をしてしまいます。こうすることで、その人物は損を免れます。
また、逆にプラスの情報を入手したとします。この場合、株価が釣り上がる前に大量に購入してしまいます。すると、株価が釣り上がってから売ることができるので、非常に得をできるのです。
このような事例をインサイダー取引といいます。
仕手戦とは
仕手戦とは、ある銘柄をめぐって、売り方・買い方がそれぞれ激しい攻防戦を繰り広げることを言います。
マーケットにおいて、例えば、1人の戦略的な投資家Aが、株価100円のある銘柄を大量に買ったと仮定しましょう。この人物が大量購入したことにより、株価は110円、120円、130円……と価値が高まっていきます。
すると、他の投資家も、「お、これは上がる銘柄だ」と認識して、どんどん購入していきますよね。それに比例して、価値もどんどんつり上がっていきます。
結果的には、投資家Aが100円で買った銘柄を、130円になった時点で売り抜くことが可能になります。30円の利鞘が出ますね。
このように、「意図的に価格を操作すること」を「仕手」と呼ぶのです。
不合理なもの、それを「まるのまま」受け入れる
このように、投資の世界にはたくさんの汚い思惑があります。それによって自分が損をしてしまうこともあります。
その時に、「この世の中が、マーケットが間違っている!」と唱えるのは無意味です。確かに正論ではあります。悔しいのも分かります。しかし、悔しがる時間は、実はとても無駄なものなのです。
このようなマーケットに当たってしまった時には、まず、このような現状があるということを、「まるのまま」受け止めましょう。その上で、「どうしてこうなったのか」という結果を、不条理な面も含め、さまざまな角度から検証し、理論立てて見直します。この作業を繰り返すことが大切なのです。
まとめると、このような世の中の悪い部分、汚い部分、ノイズのような部分をまずは「存在するんだ」と認識することから始めてみましょう。