一般消費財を扱うB to C 企業だけではなく、B to B企業においても、社内にマーケティング部門と営業部門を抱えている会社は増えています。両部門とも、最終目標は会社の売上に貢献することですが、両者がうまく連携していないというのはよく聞く話です。
今回はマーケティングと営業がうまくかみ合わないのはなぜか、また、車の両輪のようにお互いを支え合いながら業務を進めるためにはどうすれよいか、について解説します。
1.マーケティングと営業はなぜ仲が悪い?
マーケティング部門も営業部門も、企業内においては重要なセクションであり、企業の利益に貢献するためには、両者が補完しあうことが肝要です。
ハーバード・ビジネス・レビュー※1では、最近の調査でマーケティング部門と営業部門がお互いをどう感じているか、を明らかにしています。
それによると、営業担当者は自社のマーケティング担当者から連想する言葉として、「アカデミック」、「ペーパープッシャー(事務職/転じて役人・官僚)」、「無関係」を挙げています。
一方、マーケティング担当者は、「簡単な」、あるいは「無能な」という回答をしています。調査は数百人に対して行われましたが、全回答者の87%がお互いに対して、否定的なイメージを抱いていることがわかりました。
これは日本の企業においてもみられる傾向で、別々の部門ではお互いのやっている仕事が十分把握できず、相互理解に至らないのはわからないでもありません。
しかし、お互いに反目しあっていては、企業全体の利益にとってもマイナスです。ではどうしてこうも、「仲が悪い」のでしょうか。その理由は、両部門が設定する「対象」と、「目的」に違いがあるからです。
ハーバード・ビジネス・レビュー
https://hbr.org/2011/11/how-the-rift-between-sales-and
2.マーケティング部門の業務内容と目標設定
公益財団法人日本マーケティング協会が定める、マーケティングの定義とは下記のようなものです。
「マーケティングとは、企業及び行政・医療・教育などの団体・組織がグローバルな視点に立ち、顧客との総合理解を得ながら、公正な競争を通じて行う、市場創造のための総合的な活動である。」
上記の「総合的な活動」とは、市場の調査と分析、戦略設定、商品・サービスの開発、価格設定、販路や流通経路の開拓、広報・広告宣伝活動など、多岐に渡ります。
場合によっては、イベント施策による集客や、販売・営業活動、顧客情報の管理など、営業の領域にまで踏み込むこともあります。
マーケティングの代表的なフレームワークに、「マーケティング4P」と呼ばれるものがあります。これは「製品=Product」、「価格=Price」、「販売・広告などのプロモーション=Promotion」、「流通=Place」の頭文字を取ったもので、「マーケティングミックス」とも称されます。マーケティングの仕事は、企業活動を構成するこれら4つの要素を組み合わせ、最大の効果を導き出すことです。
まず自社が販売展開する主戦場たるマーケットと、ターゲットとなる顧客を定め、自社の商品企画や開発部門に働きかけることから始まります。
「売れる商品」を生み出すための、ヒントを与える役割です。その上で、自社製品のリード(見込み客)を探し、購買を検討している顧客と良好なコミュニケーションを図り、購買意欲を抱かせるまでが目標です。
これを「リードナーチャリング」といいますが、これだけでは売上に貢献することはできません。リードの獲得、育成が済んで、検討段階に入った顧客は、営業部門に渡され、実際に営業マンが営業活動を通じて、契約成立にまで至ります。
3.営業部門の業務内容と目標設定
営業部門の仕事は、自社製品を顧客に売ることであり、しばしば「販売」と同義に扱われます。
営業は、自社の商品やサービスを顧客にすすめ、購入を促し、売買契約を締結するのが最終目標となります。
会社によっては、販売・導入後のメンテナンスなどのアフターサービスを営業が担当するケースもありますが、営業の基本業務は、営業活動を通じて売買解約を結ぶことにつきます。
4. マーケティング部門と営業部門とでは対象と目的に違いがある
営業部門とマーケティング部門とでは、対象と目的に違いがあります。
営業は、目の前の顧客に対して営業活動を行います。これに対してマーケティングは、目の前にいる顧客を相手にするのではなく、実体として捉えにくいマーケットや、潜在顧客が対象となります。
マーケティングでは、市場をセグメント化し、自社のターゲットを選定してプロモーションをしかけていきます。
マーケティングの仕事の目的は、「自社の存在を消費者に知らしめ、自社の商品やサービスを継続して購入してもらう」ことです。これを言いかえると、自社と消費者との良好な関係を築くこと、となります。
営業部門では、あらかじめ年次目標を設定し、それを月次目標に落とし込み、それぞれの営業マンは売り上げ目標を達成するために奔走することになります。
もちろん、自分が担当する顧客と良い関係を保ち、売上を維持している営業マンも多数存在します。ただ、マーケティングと異なるのは、あまり長いスパンで顧客を捉えてはいないということです。
営業マンは直近の売上数字を達成するのが先で、短期的な視点で顧客を眺めています。
5.マーケティングと営業がうまく連携するために
大抵の企業では、マーケティング部が営業部をサポートし、営業が売上契約を勝ち取る、という構図が描かれています。これをレースに例えると、レースマシンを研究・開発するエンジニアがマーケティング担当者であり、マシンを実際に操作してチームに勝利をもたらすドライバーが営業担当者ということになります。
昨今のデジタルマーケティングの進化に伴い、より高度な市場分析とペルソナの設定が可能になりました。多くのリードを獲得し、リードナーチャリングを経て、購買意欲の高い顧客へと導いていきます。営業活動を行う上で、リストが必要になりますが、リードナーチャリングで育成した「確度の高い顧客」で構成されたものであれば、商談の成功率も上がることになります。
マーケティング部門と営業部門は、最終的には、同じゴールに向かって、それぞれの役目を果たしています。両方が会社の成長という、共通の目標を持っていることを再認識することが、相互理解のためには不可欠です。
まとめ:マーケティングと営業は車の両輪のようなもの
今回は、マーケティング部門と営業部門の業務内容、目標設定と対象の違いについて解説しました。マーケティング部門は営業部門をサポートし、営業部門は売上契約を成立させることで企業の利益に貢献します。両部門は車の両輪のようなもので、企業活動を推進させるためには連携し、補足しあうことが望まれます。