情報発信のツールとして、また、ユーザーの属性や要望をリサーチする手段として、今や欠かせないのが企業サイトです。企業サイトには、「お問い合わせ」フォームが必ず用意されています。昨今では、営業担当者が新規顧客の開拓を狙って、この問い合わせフォームを利用する動きが広がっています。この営業手法を、「問い合わせフォーム営業」と呼びます。
今回は、この「問い合わせフォーム営業」にスポットをあて、問い合わせフォーム営業を行う上での注意点やポイントについて、詳しく解説します。
「問い合わせフォーム営業」とは?
営業アポイントを取るためには色々な手法があるが・・・
営業が新規に顧客を獲得する際、必ず直面するのが見込み客へのアプローチです。まったく面識のない相手に、コンタクトを取ろうとするとき、これまではテレアポや飛び込み営業を行ったり、自社の商品やサービスに関するリリースを、DMやファクシミリを用いて一斉に送り付ける手法が主流でした。先方と面接するために、それこそ「数打ちゃあたる」的にこれらの手法を繰り返し、「100件に1件でも契約につながればよし」という根性論がまかり通っていました。しかし、このような営業手法がいかに非効率か、営業担当者本人が痛感していたことでしょう。
2019年3月に、株式会社アタック・セールス・アソシエイツが3360名の営業担当者を対象に行った調査※1によれば、営業活動における新規顧客開拓の割合をたずねると、全体の59.9%が「既存顧客が多い」と回答しています。これに対して「ほぼ新規開拓」、あるいは「新規開拓が多め」と答えた人は、全体の25.9%という結果が出ています。また、目標達成できた人にその理由をたずねると、20.2%から「新規顧客開拓に注力した」という回答を得ています。さらに、目標達成できなかった人にその理由を聞くと、「新規顧客開拓をしなかった」と答えた人の割合が、全体の21.0%という数字が出ていました。これらのことから、多くの営業マンが、新規顧客開拓を課題として意識しているものの、どのようなアクションを起こせばよいか、明確な解答を出せずにいる実態が明らかになりました。
※1株式会社アタック・セールス・アソシエイツ
「問い合わせフォーム営業」という新たな手法
事業活動の一環として、自社サイトのコンテンツを充実させる企業が増えています。「オウンドメディア・マーケティング」というもので、自社そのものや、商品・サービスに関する情報を積極的に発信し、単なるリード(見込み客)を顧客へと育てる、マーケティング手法です。情報を発信すれば、それに対するレスポンスを期待するのは当然のことです。このときにセンサーの役割を担うのが、「お問い合わせフォーム」といえるでしょう。
このお問い合わせフォームを活用して、相手からアポイントを取得する営業手法が「問い合わせフォーム営業」です。
メール営業との違い
これに似た手法で、メール営業というものがあります。自社の会社概要と、自社製品やサービスについての簡単な解説、問合せ先やメールアドレスなどのお決まりの内容をテンプレートにまとめ、メールアドレスのリストに基づいて、一斉配信するものです。一方、問い合わせフォーム営業は、フォームに必要事項を記入・送信しますが、その内容が異なります。一見して営業メールと分かるような、テンプレートを送っても意味はありません。自分が何者か自己紹介した上で、そのサイトが掲載したコンテンツをどう受け止め、こちらが持つ商品・サービスが相手に何をもたらすかを、簡潔に記すことが重要になるのです。
「問い合わせフォーム」への営業メールはアリ?
ここまで読まれた方は、ふと疑問に感じることはありませんか?
「そもそも、問い合わせフォームに営業メールなんか送っても、相手にされないだろう」と。それどころか、マナー違反では?と危惧される方もいらっしゃるでしょう。
企業サイトが、お問い合わせフォームを設定する目的は様々です。まず、すべての問い合わせに対応する「総合窓口」として、フォームを設けているケース。資料請求を受け付けるのもこの窓口になります。それから、転職希望者や学生向けに設けられている「採用窓口」や、顧客からの注文や見積もりを受ける「顧客窓口」、カスタマーサポートを主眼とした「相談窓口」など、専用フォームと呼ばれるもの。これらのフォームのうち、問い合わせフォーム営業をかけていいのは、総合窓口としてフォームを設定している場合に限られます。専用フォームに営業メールを送っても、削除されるか、逆効果になりかねません。なぜなら、こうした目的別に区分されたフォームは、採用担当や顧客担当など、担当者ごとに振り分けられ処理されます。この段階で、営業メールと判断されれば、こちらが接触したい担当者や、意思決定者の目に触れる確率は、極端に低くなってしまうからです。それどころか、相手の心証を害してしまう恐れもあるのです。
問い合わせフォーム営業を行う上でのポイント
では、どのようなことに注意して、問い合わせフォーム営業を行えばよいのでしょうか。ポイントは、以下の3つです。
①ホームページの感想を書く
先にも触れたように、問い合わせフォームは、企業サイトのセンサーであり、コンテンツを掲載した側は、サイトユーザーの感想を知りたがっています。まずは純然たるユーザーとして、相手企業のサイトと向き合うことです。その上で、感じたことを素直に伝えましょう。この時、文章スキルや技術用語にこだわる必要はありません。素人目線で、サイトの印象を簡潔につづるのです。決して売り込まず、あくまで個人として意見を述べることで、相手がこちらに関心を持つ確率は高くなります。
②相手の抱える課題を表示
サイトの感想を述べることが導入部とすれば、ここからが本文となります。相手の企業の製品やサービスを、プロの目線で客観的に眺め、課題となりそうな点を洗い出します。ここで気をつけたいとことは、上から目線にならいよう、純粋に疑問点としてぶつけることです。
③自社サービスが相手にもたらすメリットを明確にする
ここらは売り込みになりますが、押しつけがましい表現は控えましょう。自社が持つ商品やサービスが、相手企業の抱える課題を解決し、どのようなメリットを与えるかを、さりげなく伝えるのです。詳しく記載する必要はありません。映画に例えれば、予告編のようなものです。
問い合わせフォーム営業の目的は、こちらの提案を、決済権を持つ担当者に認識してもらうことです。「面白そうなユーザーだな」と、ベクトルをこちらに向けてもらえれば成功といえるでしょう。
④次のアクションへつなげる
問い合わせフォーム営業は、相手とのアポイントを取るきっかけに過ぎません。メールを送っておしまい、というものではありません。相手に次のアクションを促すのです。とはいえ、いきなり、アポを取ろうと焦らないようにしてください。性急に事を運ぼうとすると、かえって相手に警戒感を与えてしまいかねません。具体的には、こちらのサイトを訪問してもらうとか、資料請求してもらうなど、少しずつ相手との距離を縮めることが重要です。
まとめ:決済者に思いを伝えるための工夫
今回は、新たな営業手法として注目を集める、「問い合わせフォーム営業」についてご紹介しました。通常なら、削除されてしまいかねない営業メールを、どのように決済者の目に触れるようにするか、を念頭におくことが大切です。オウンドメディアとしての企業サイトは会社の顔であり、経営者をはじめ決済者は、ユーザーがどう捉えているか、常に意識しています。そうであれば、こちらも個人としてサイトの感想を述べ、その上で相手の現状の課題を解決するために、自社がどのように手を差しのべられるか、簡潔に伝えましょう。
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