「実需投資家」と「仮儒投資家」の違い

相場には二つのタイプの投資家が存在します。その2種類とは、「仮需」タイプと「実需」タイプです。この二つは、全く違う考え方とやり方で市場に参入してきます。

「実需」タイプとは、「実体経済に伴った資金調達を行う」投資家のことです。旅行関係や製造業、輸出入関係の企業などがこれに当てはまります。この「実需」タイプの参加者の中で一番市場に影響を与えるのが、国内の輸入企業です。

こんなニュースを聞いたことはありませんか?

「国内輸入企業の円売りによって、ドルが上昇」

輸入企業は、海外から原材料やモノを大量に買い付け、精製後にそれを国内に売ります。買い付け時の支払は日本円ではなく外国通貨です。ですから、例えば米国から輸入するとなれば、円をドルに交換する必要があります。ということは、輸入企業によって「ドルが買われて円が売られる」のです。そして、意図せずとも為替レートに変化をきたします。

一方、「仮需」タイプとは、いわば投機筋、「ファンドやその他の金融機関に属する」投資家のことです。ファンドは、「一般消費者から集めた資金を運用して利益を上げる義務」のある組織のこと。つまりこのタイプの投資家は、実需タイプのように実体経済に即すわけではなく、取引の利ザヤで儲けるために市場に参入してきます。この仮需タイプの投資家が相場に与える影響はとても大きいです。

この二つタイプの投資家の大きな違いは、「量的制限」と「時間的制限」の有無です。実需タイプは、支払いなど、必要に駆られて通貨の交換を行うので、それは反対売買の必要がありません。つまり、ポジションを清算する必要がないのです。ただ、本当に必要な量しか通貨交換をしませんので、取引量には限りがあります。

反対に、仮需タイプの場合は、実体経済的には関係しない「利ザヤ目的の外貨投機」を行うので、必ず反対売買の必要があり、「時間的制限」が存在します。また、多くの人の資金をまとめて取引を行っていますし、高率のレバレッジをかけている場合が多いので、取引量は実需と比べて圧倒的に多いのです。

ということは、相場に与える影響はどうなるか。ここが問題ですね。

傾向として、実需タイプの動向はその通貨の長期的なトレンドになり、仮需タイプの動向は短期的な、チャートのジグザクとして反映される傾向があります。

たまに、ファンドの投機がある銘柄に一点集中した場合は、トレンド形成のきっかけになることもあり得ますが、その際も仮儒タイプは、「いつかは反対売買しないといけない」のです。つまり、反対売買のタイミングが一緒になれば、その時は、反対のトレンド形成のきっかけになることもあります。

  仮需タイプ 実需タイプ
投資金額 少ない 多い
時間制限 制限あり 制限なし

CFTCで「投機筋」の動きをチェックしよう

個人投資家は、仮儒タイプの動向に目を向けておく必要があります。個人投資家がドルやユーロなどメジャーカレンシーの価格を動かすということはまず不可能なので、投機筋の動きが顕著であれば、その波に乗ることも大切です。機関投資家の動向を知るうえで大きな助けになるのが、CFTCの建玉明細でしょう。

CFTC(Commodity Future Trading Commission)とは本来、米国内のFX(外国為替証拠金取引)を含むデリバティブ市場での「詐欺」「市場操作」などの不正行為を取り締まり、市場と市場参加者を保護することを目的とした機関です

ただ、その一環として、大口トレーダーの口座を取り扱っている会社に、該当するトレーダーの建玉状況を毎日の報告するよう義務付けているのです。この報告では、規制内容が異なることから、トレーダーを当業者(大口ヘッジャー)と非当業者(大口投機家)に区別しています。つまり、大口ヘッジャーと大口投機家の取組高が、毎日CFTCに報告されているわけです。CFTCは、この大口投機家の建玉明細を「COT(Commitments of Traders Report)」として、基本的に毎週金曜日の取引終了後、その週の火曜日時点の取組内容を発表しています。これを見て、大口投機家の買い玉が売り玉を上回っていれば「大口投機家の買い越し」であり、投機マネーが買いに流れていると分かります。上昇トレンド中に大口投機家の買い越しが増えていれば「さらに価格は上昇する」ということになるわけです。

反対に、下降トレンドの最中に大口投機家の買い越しが増えていれば、下げの勢いが止まる可能性が考えらます。逆に大口投機家の買い越しが減っていれば、買い玉の損切りが増え、下げを加速させる可能性があると考え、売りから入ることも視野に入れることができます。

市場に政府が参入することもある

市場には、企業、個人だけでなく、ごくまれに政府が参入することがあります。現在の市場にはほとんど見られませんが、これを、「市場介入」と呼びます。

なぜこんなことをするのでしょうか。それは、各国が思う「ベストな通貨水準」があるからです。例えば、日本は輸入産業の比重が高いため、「過度な円高」は好ましくないと考えられています。「ベストな通貨水準」は、「比較的円安」となります。また米国では、ドル高信仰がいまだ根強く、ドルの上昇を金融政策に盛り込む場面もよくあります。

そのベストな位置から、実際の通貨価値がかけ離れてしまった場合に、各国の政府が市場に参入し、通貨価値を適正な方向に誘導しようとするわけです。政府が持つマネーは巨額であり、だからこそ一発で市場に影響を与えます。

介入には種類があります。「介入するかもしれないけど、しないかもしれない」などと、「介入を匂わす」ことも行われます。こういった口先だけの介入を「口先介入」と表現します。なぜこんなことをするかというと、実際にはしないけれど、するかもしれないという懸念だけで、相場を意識的に動かせるからです。実際、市場に大きな影響力を持つFRB(米連邦準備委員会)のバーナンキ議長や、グリーンスパン氏などの発言によって為替相場が変動することはよくあります。

またその他の介入の種類としては、「委託介入」、「協調介入」、「覆面介入」などが挙げられます。「協調介入」というのは、ある為替水準がベターだという目標を、「二つ以上の国が共有した」時にのみ可能な方法です。たとえば2つ以上の国が、今よりも円安ドル高になった方が「自分たちの国にとってもいい通貨水準だ」と判断すれば、「協調」してドルを買い、円を売ることで、通貨価値を意図的に変更させられます。

また、「覆面介入」という方法は、政府や財務省が公表せずに行われるものを指し、別名「隠密介入」とも呼ばれます。

「委託介入」は、海外の通貨当局が、別の中央銀行の依頼によって代理で行う介入のことを指します。例えば、取引時間的が日本から海外に移ってしまった場合、日銀は、FED(FederalReserve Bank・米連邦準備銀行)、ECB(European Central Bank・欧州中央銀行)、BOE(Bank of England・英国中央銀行)などに介入を委託します。当然、日本の取引時間帯に、別市場から介入を頼まれて、日銀が介入することもあり得ます。

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