通貨の特徴を知れば、儲けのポイントが見えてくる

外国為替証拠金取引で取引できる通貨は多くあります。各国通貨のメリットとデメリットを相対的に眺め、取引チャンスを広げるのであれば、各通貨の①「金利」②「ボラティリティ」③「各国の関連性」に注目する必要があります。

①の金利に関しては、確かに高金利であればスワップ狙いができますが、インフレ率や経済状況・将来性を知らないと非常に危険だということは以前にも書きましたね。②のボラティリティに関しては、値動きが荒く、ザクザクと動くチャートを形成する相場は、利ザヤを得るチャンスが多いという意味で、短期狙いの投資家には魅力的です。また③に関して、世界の国家は貿易などのビジネスによって繋がっているわけですから、各国の主要経済と貿易関係を知っておくことは非常に有利になります。ひとつの国の景気が上昇・悪化した後、それが派生する先を知ることで、価格予想が容易になります。

《メジャーカレンシー編》

ドル~まだまだ世界の主軸通貨~

ドルは世界の主軸通貨です。仮にドルがその存在感を薄くしても、その他の通貨が代わりにならない限り、主軸通貨の変更は起こり得ません。海外に旅行したとき、その国の通貨がドルではなかったとしても「円では買えないけどドルなら買えるよ」というようなことはよく言われます。こういう日常の中に、「通貨の信頼」が見え隠れしているのです。

こういった信用を持つということは、各個人の資産運用の視点からも重宝されます。

以前までは、「有事のドル」として、戦争などが起きた際は無条件でドルが買われていました。ただ、米国が戦争(テロ)の標的になることもあり得ますし、目下の金融恐慌の震源地として株価の低迷や投資資金の流出が著しいのが現状です。

また、ここ数年の米国の動きとしては「代替エネルギーの開発」に注目が集まっています。オバマ大統領も、クリーンエネルギーの促進に多大な資金を投じ、バイオ燃料の生産やハイブリット車の開発や商品化を、国を挙げたプロジェクトにしようとしています。まだまだ時間はかかるでしょうが、環境ベンチャー企業などの株価と米ドルの行方を関連付けて考えるのも一手です。また、内需に関しては、インフラの老朽化を理由に、公共事業としての建設業界や輸送業界などが盛り上がりそうです。株価をチェックしておきましょう。

なお、米国経済の展望を知ろうと、要人の中でも特に、歴代の財務長官であるルービン氏やサマーズ氏、また投資家のウォーレンバフェット氏、またシカゴ大学大学院教授グールズビー氏の発言が市場関係者に強く意識されつつあります。

金利に関しては、2008年の金融恐慌を受けて、0・00~0.25%の枠内で収める「ほぼゼロ金利政策」を施行しています。長期金利に関しては、景気の動向のほかに、世界中にばらまかれている米国債の売却などのニュースに注目。新興国などでは米国債の売却が検討されているようなので、これが事実になれば、大きな下落要因になるでしょう。

ユーロ

99年に欧州12カ国の統一国家として発足したのがユーロです。現在は、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどを含む欧州27カ国が加盟し、世界のGDPの20%前後を維持する強大な経済融合体に成長しています。現在の為替市場ではドルの次に取引量の多い通貨であり、世界的な基準としては、ユーロとドルの価格差によって為替の強さを見極めます。

国によって、経済の規模も違うし、景気がいい国も悪い国も存在するため、どこの国の経済を見ればいいか釈然としませんが、基本的に、「ドイツ」、「フランス」、「イタリア」の3国の経済動向がユーロ圏経済と連動していると考えていいでしょう。

2008年、ユーロは、サブプライムローン問題の震源地である米国との経済的依存を背景に、非常な悪影響を受けました。GDPは米国同様マイナス。失業率なども急上昇しました。

また、金融政策に関しては、ECBという機関が行うという形態となっていますが、2008年からECBは大幅な利下げを実施しています。同年10月の他の主要国中央銀行との協調利下げと12月の利下げで、累計1.75%の利下げを敢行。さらに2009年にも追加利下げを敢行し、FXにおける金利メリットを低下させています。

とはいえ、この金融危機は、ユーロに意外な追い風となりました。デンマークやスウェーデン、ポーランドなどが、ユーロを導入するという意志表明をしたのです。ユーロは経済的な基盤をさらに大きくし、米ドルが持つ主軸通貨の座を狙っていくでしょう。

円は私たちに一番なじみ深い通貨です。しかし、世界的に見たら、マイナーカレンシーだということを忘れてはいけません。

世界から見て日本は「海外から原材料を輸入し、そして加工して売る」という加工貿易国の印象が非常に強いです。事実、アジア各国(特に中国)とのやりとりが多いため、アジアで何かが起こる(経済不安や内紛など)と、そういった悪影響に反応する通貨という側面を持っています。

また、最近では全世界的に低金利になっていますが、日本の金利は、金融恐慌以前からゼロ金利政策という世界的に見たら異常な歴史を持っています。そういう意味では、「円キャリートレード(円を借りて金利の高い外貨で運用すること)」が常に活発であり、恒常的に「売られる傾向」の強い通貨と言えるでしょう。

今後は外需を中心とした需要喚起としてハイブリッド車やエコカーなどの開発に注目が集まります。この分野は、地球全体の目標として掲げられているにも関わらず、様々な既得権益層によって阻まれていたこともあり、今後の日本の伸びしろです。加えて、工業用ロボットや繊細など、独自の技術の輸出にも注目しておきましょう。

《マイナーカレンシー編》

ポンド

英ポンドは、戦前まで基軸通貨としてその存在感を放っていました。しかし、戦後は国力の低下によりドルにその座を奪われてしまいました。今は、ユーロとドルに挟まれて、あまり印象のない通貨になっています。「ポンドはユーロに入るのか」という議論が以前から取りざたされていますが、ユーロに入るということは、金融政策的に自分たちの主権をなくさざるを得ません。英国は気質上、そういうことを嫌うのでしょう。以前までは、国の長い歴史が通貨に信用を与えている面もあり、安定しているという印象がありましたが、昨今では、信用収縮による住宅ローン市場の機能不全、投資マインドの低下が著しく、なかなか手を出しづらくもあります。ただ、ボラティリティが非常に高く、短期間で大きく利益を上げることが可能ではあります。加えて、同国は、原油などエネルギー生産が盛んな国であり、その輸出高はGDPの1割を占めます。ですので、原油価格の上下によって国益が増減し、ポンドの価格変動にも影響を与えてしまいます。

ちなみに、円とポンドを直接交換する市場は、実はありません。だから、円を持っている人がポンドをほしいときは、まず円をユーロやドルに換えてから、それとポンドを交換するという動きとなります。

フラン

スイスは「永世中立国」という印象が強い国です。また、スイスの憲法では以前まで、通貨価値の40%をゴールドで裏付けることが規定されていたので、金との連動性は非常に高く、それがフランに堅実なイメージを植え付けています。こういったことから、戦争などの有事の際には、ドルに代わって「安定した通貨」という印象のフランが買われます。フランは、「逃避通貨」なのです。

ちなみに、スイス経済はユーロ圏経済に依存しています。輸出は約60%、輸入は約80%が対EU諸国です。つまり、スイス経済に直接的な問題がなくても、「米国の悪化→ユーロ圏の悪化→スイス経済へ悪影響」という状態が考えられます。

円との取引では、両方とも金利差が少ないうえに実需による取引が主流なので、値動きは小さいです。

スイスの産業構造に関しては、「観光」と「精密機械などの輸出産業」をチェックしておきましょう。輸出産業を主とする国家は、あまりに自国通貨が高くなると、マイナスの影響を及ぼしてくるので、「あんまりフランが高くなると、自律修正の動きが出てくるかも」と考えておいた方がいいでしょう。また、同国の二大銀行であるUBSとクレディ・スイスも通貨の動きに関連しますので、チェックしておきましょう!

ニュージランドドル

高金利で有名なニュージーランド・ドル。ニュージーランドを見る独特のポイントは、「農業国として天候に影響を受ける」ということでしょう。ニュージーランドは、貴金属やエネルギーではなく、酪農品や林産物など、天気を相手にした農産業が非常に盛んなのです。2008年は、原油価格とともに穀物価格も上昇したので、そのおかげで主要国の中では好調な経済を維持することができました。

輸出国なので、スイスや日本と同じく、余りにも自国通貨が高くなってしまうと、海外で売れなくなってしまい、経済の悪化に繋がりますので、過度に上昇した際には、同国要人の金利の引き下げコメントなどに注目するべきです。

また、同国のインフレ率の上下も相場に影響を与えています。同国は、過去数年にわたり高インフレに悩んでおり、2008年に3.4%、2009年には3.2%と、物価上昇率の上限である3%を割ることができていません。こういった背景から、同国は金利を0.5%まで引き下げ、オーストラリアとの金利差が逆転しました。

なお、今後は、バイオテクノロジー関連や映画ビジネスなどに注目が集まります。経済的な底上げには、こういった独自の産業価値を高めていく必要があるでしょう。

中国人民元

中国は、金融恐慌後、08年第3四半期にはひとケタ台に落ち込みましたが、それでも経済成長著しいという印象の強い国です。こういった背景から、金融恐慌後、一部では、「次世代の主要通貨は元だ」との意見も多く聞かれたほどです。

ただ一方で、国際化を前提としたモラル意識の欠如、また、金融、エネルギー、環境保全に対する問題点などが、市場参加者の不安をあおっています。「国際社会への参加」「市場の開放」というキーワードが、今後の元の動向を占う上で重要になってくるでしょう。

また現在、中国経済の主体は「モノづくり産業」ですが、今後は日本の経済成長時と同様、モノづくりからサービス産業への移行も考えられます。そうなると、物理的な貿易業務が低下し、成長が穏やかに移り変わることも考えられます。

オージードル

オーストラリアは先進国の中では非常に高い金利を維持しています。金利が高いからと言って、「経済的に不安定なのでは?」という心配もありますが、財政赤字や国家的な腐敗が少なく、比較的安心して投資できる国でしょう。またオーストラリアは、金や銅など鉱山物が多く、加えて、農業もGDPのかなりの割合を占めていますので、商品相場全般と連動する通貨です。農業的には、干ばつや豪雨が続くと影響を受けますね。

ボラティリテは大きめ。これは、ドルやユーロ、また円などに比べて、市場規模そのものが小さいからです。小さい風呂桶の中にちょっとでも水を入れたら、大きく水面が揺れますよね。市場と言うのはそれと一緒の仕組みなので、ちょっとのお金が出たり入ったりするだけで、大きく動くのです。

このように、高金利プラス、ボラティリティの大きさから短期売買の投資家に人気があります。

南アフリカランド

アフリカランドの人気の主な理由は金利の高さです。今や南アフリカの金利は先進国に比べて圧倒的に高い状況で、スワップ取引の象徴です。

人口は5000万人弱と少ないものの、一人あたりの国民所得はアフリカでもっとも高いです。その理由は、ダイヤモンドやプラチナ、金などの豊富な資源。特にプラチナは、最近では自動車排出ガスの浄化触媒として利用されており、エコの潮流に乗った媒体と言えます。

さらに、工場大国としての側面もあります。ユーロ圏の自動車、例えばBMWやベンツなどの主要生産工場が同国です。大手自動車企業の電気自動車への移行なども、間接的に南アフリカの経済に影響を及ぼすでしょう。

また、最近の経済のけん引役としては、サービス産業と製造業も挙げられます。ただ、政治的なリスクやインフラの不整備への不安が非常に大きく、カントリーリスク(その国特有のリスク)には注意が必要でしょう。

加えて、最近の同国経済は、海外からの投資によって成り立っているので、外部市場で何かしらの経済的インパクトが起きた時は、資金が低リスクの先進国に向かい、ランド安になる流れが容易に作り出されてしまいますので注意しましょう。

カナダドル

カナダは、高水準の教育制度や低い犯罪率、そして原油、ガスなどの資源があることで、「底硬い」感のある国です。カナダは先進国の中でもGDP成長率が高く、インフレもそこまで高くありません。カナダの産業構造は多岐にわたります。輸出は、木材や農畜産物。日米の自動車メーカーの工場も多くあり、また、最近ではハイテク・ソフトウェア産業を中心とした国家として、新たな経済の切り口を見ることもできます。そう言った意味では、比較的安定的な通貨でしょう。米ドルやユーロなど巨大通貨に隠れてはいますが、スワップ狙いの長期投資家は注目が必要です。

ただ、注意すべきは「輸出も輸入もアメリカに頼りっきり」という現状です。対米輸入は6割、輸出に関しては約8割にも上ります。この構造は、好景気の時は強いです。アメリカの景気が上昇すれば、それに乗じて「→カナダのアメリカ向け輸出が拡大→カナダのGDPが上昇→カナダドルの上昇」というシナリオが作り出されます。ただ、その反対もしかりで、米ドルが下がればカナダドルも下がる、という状況が作り出されまてしまいます。

もう一つ注目すべきは、砂の中にある原油「サンドオイル」の埋蔵量の多さと精製技術の確立によって、資源国としての一面も持ち合わせつつあるということです。他のコモディティ通貨と同様に、原油価格の動向に左右される一面も持っています。実体経済と通貨の関係を読むポイントとしては、資源価格と株価の関係があります。例え、依存のある米国株価が下落したとしても、エネルギー価格が堅調であれば、カナダへの影響は限定的となる傾向があります。逆に言うと、エネルギー価格も米国景気も悪化となれば、カナダにとってはダブルパンチです。

ノルウェークローネ

地図を見ると、ノルウェーの隣には、推定石油埋蔵量は130億バレル(日産約600万バレル)という膨大なエネルギーを有する「北海油田」があります。ノルウェーは世界有数の産油国なんです。同国のGDPの25%が石油天然ガスで維持され、同部門は輸出額の67%を占めており、原油輸出で得た利益を元に創設した年金基金(GPF)を有していることが、ノルウエーの信頼を高めていると言えます。

実際、2008年の金融恐慌の後に、同国の経済は全体的に低迷したのですが、原油価格の上昇を背景に、石油関連の企業への投資だけは好調を呈しました。これは経済の基盤としては固いものです。しかし当然ながら、原油価格が下落したときは、悪影響を及ぼします。

なお、石油・ガスに加え、ビジネスやサービスに関しても、EUとの関係が非常に強いです。輸出は80%以上を、輸入も70%弱をEUに依存していますので、ユーロと連動した動きをみせるのが特徴です。

ロシアルーブル

世界最北端の国ロシアの利点は、何といっても世界の7%を占める油田があるということでしょう。天然ガスでもロシアはOPECのような役割を果たそうとするほどの資源を持っています。ロシアの貿易収支の80%がこれらの天然資源で賄われているほどですが、これはメリットにもデメリットにもなります。98年、原油価格の下落を背景に、ロシアは単独で金融危機に直面しました。ただ、逆に、2008年の金融危機時には、原油価格が上昇していたのでロシアルーブルは下落を免れました。

産業的には既存の鉄鋼、重工業産業に加え、今後は、航空や通信、またバイオテクノロジーやエレクトロニクスなどに注目が集まります。ただ、産業形態的には、国外からの投資マネーの調達が不可欠であるので、世界的な不景気時には、産業的な進歩は遅れざるを得ないでしょう。

また、政治的な難点として、西側諸国といわれているアメリカやヨーロッパと対峙しがちだということも、市場の外的要因として大きいです。

ブラジルレアル

ブラジルは、過去に多くの経済的問題がありました。代表的なものがインフレです。経済成長率が低かった上に、インフレ政策がうまくいかず、90年代までは国際機関の支援に頼っていたところがありました。しかし、2000年に入り、インフレ問題も沈静化し、堅調な経済成長を続けるようになり、市場に注目され始めました。

同国は鉄鉱石、原油、穀物などの資源大国です。鉄鉱石の輸出量では世界一を誇り、また、確認埋蔵量(確認はされているが、まだ開発されていない原油量のこと)は50~80億バレルと、まだまだ潜在能力が高いです。加えて、大豆、砂糖の輸出額も世界一、トウモロコシでは4位、とサトウキビやトウモロコシに至っては、それを利用してバイオエタノールを作ることで、非常に大きな注目を浴びてきました。

加えて、産業的には、内需、つまり自国消費の傾向が強いため、金融恐慌などグローバルな危機が訪れたときにも、悪影響は限定され、内需の高さで堅調な経済を維持すると考えられます。

コンテンツマーケティングを成功に導く3つのステップ