政府主導の「働き方改革」が叫ばれるなか、従来の労働環境も変化を遂げています。正規労働者至上主義の考えが見直される一方で、多様な働き方に魅力を感じる労働者も増えています。そのような状況で、今注目を集めているのが「ギグワーク」という働き方です。今回は、ギグワークとはどのような労働形態か、またギグワークに関する最新事情について解説します。

「ギグワーク」という働き

ギグワークとは?

まず、ギグワークについて説明しましょう。

ギグワークという言葉は、英語の「ギグ(gig)」と「ワーク(work)」」とを合わせた造語です。ギグとは、アメリカにおいてミュージシャンが、気の置けない連中と単発で即興演奏することを意味します。そこから派生して、細切れの単発した仕事をギグと呼ぶようになりました。つまりギグワークとは、単発の仕事をこなす働き方を指します。そして、ギグワークの担い手となる労働者は「ギグワーカー」、ギグワークで成立する経済圏は「ギグエコノミー」と称されています。

ギグワーカーとフリーランスとの違い

インターネットの普及とともに、パソコンやスマートフォンを駆使して仕事を請け負うフリーランスは増加傾向にあります。企業側でも、正規従業員にかかるコストを軽減する目的で、フリーランスを活発に利用するようになりました。

ギグワーカーも会社のような組織に所属せず、端末やモバイルギアを使い、空き時間を利用して仕事を受けます。一見、同じような労働形態に思えますが、両者には明確な違いがあります。フリーランスとは、企業と雇用契約を結ばずに、単発に発生する仕事をプロジェクト単位で受けるもので、専門知識や技術を提供して報酬を得る働き方です。これに対してギグワーカーは、ネットを介して単発で仕事を受けますが、プロジェクトを完遂する義務はありません。自分の都合の良い時に働き、いつでも辞めることができるのが最大の特徴といえるでしょう。

ギグワークの始め方

ギグワーカ―になるには?

組織に属さず、社会的なしがらみとは無縁に、自由裁量で働けるギグワークは、新たな労働の形として、ここ数年で脚光を浴び始めました。

ではギグワークを始めるには、どのような方法があるのでしょうか。

端的にいうと、サービスを提供する人間が、仕事を管理するプラットフォームとなる事業者と雇用契約を結ぶか、雇用通知を介して契約を交わすことで、時間に拘束されずに仕事に従事することができます。実際に、どのようなプラットフォーム事業者が存在するか、見ておきましょう。

具体的なギグワーク

ギグワークは、アメリカの社会ではかなり浸透しており、単発の仕事を提供する企業が多く見られます。日本ではまだあまり普及していませんが、「Uber(ウ―バー)」などの社名がニュースでも耳にする機会が増えました。ギグワークにおける仕事の種類は様々で、唯一の共通項が、ネットを介して仕事を受け、空き時間に作業をこなす、という点です。

  • Uber (ウーバー)

アメリカのUber Technology(ウーバーテクノロジー)が運営する、インターネットを活用した配車サービスです。自動車を所有しているサービスの提供者(労働者)がUberに登録し、車を必要としているユーザーから連絡が入ると、タクシーの役割を果たすものです。

  • Uber Eats (ウーバー・イーツ)

先にご紹介したUber Technologyが、配車ビジネスを応用して始めた料理の宅配サービスです。出前サービスに対応していない料理屋でも、Uber Eatsのアプリからなら注文することができるため、アメリカを中心に瞬く間に広がりました。Uber Eatsは、宅配要員を抱えておらず、宅配業者と契約している訳でもありません。デリバリーを担当するのは、Uber Eatsとはなんの関わりも持たない一般人です。彼らが空いた時間を利用して、料理をユーザーまで届けるのです。これが同社のビジネスモデルであり、「配達パートナー」と呼んでいます。日本でも、2016年からサービスを開始しています。

  • Shearshare (シェア・シェアー)

美容室の空き時間に、店舗を持たない美容師にスペースを貸し、ユーザーにヘアカットやカラーなどのサービスを提供するビジネスモデルです。

アメリカのギグワーク最新事情

アメリカでは、日本に比べてギグワークが一般にも浸透しており、ギグワークのみで生活している人も大勢います。CNNビジネスの記事※によると、すでに2017年5月の時点で、全労働人口の約34%がギグエコノミーに所属しており、この傾向はその後も拡大し続け、2020年には約43%に達するだろうと予想されています。

起業家のマリオン・マクガバンは自著「ギグ・エコノミー襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル」の中で、ギグワークがアメリカ社会の中で急速に広がりつつある現状を伝えています。国民皆保険制度のないアメリカでは、会社に所属していないと自費で治療費を負担しなければならず、それがフリーランスになるには高いハードルになっていました。オバマ政権時代には、医療保険改革が行われ、それが独立へ向けて労働者の背中を押すきっかけになりました。さらには、独立して短期の仕事をしたい専門家と、企業側とをマッチングさせるプラットフォームが相次いで開発されたことが、流れを決定づけたのです。今では1人の労働者が、複数のプラットフォームに登録しており、色々な会社から仕事のオファーを受けています。

※CNNビジネス

まとめ:日本におけるギグワークの可能性

ここまでお読みになって、ギグワークに魅力を感じる方も多いのではないでしょうか。ただ、自由な時間に自分の裁量で働ける反面、収入が不安定であったり、何かの時に保険が適用されないなど、マイナスな側面も否めません。そして、日本でギグワークが浸透するまでには、まだまだ時間を要すると考えた方が良いでしょう。なぜなら、日本では依然として正規雇用信仰が根強く、労働市場でもてはやされるスキルを持つ労働者が少ない、という事実があるようです。それでも、ギグワークが拡大することにより、柔軟な働き方が選択できる社会は、あらゆる可能性に満ちています。これからも、ギグワークという新しい働き方に注目していきましょう。

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