令和二年も新年度を迎え、人事異動で宣伝部や広報部など、マーケティング関連の職場へ配属された方もいらっしゃるでしょう。ビジネスシーンではもはや、当たり前のように使われている「マーケティング」という言葉ですが、マーケティング職が実際にどのような仕事をしているか、正確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。また、これから仕事を進めていく中で、例えばプロモーション業務を、外部のマーケティング会社へ業務委託する機会は増えていくでしょう。そんな時、「どの会社へ頼んでいいか分からない」と、戸惑われることになるかも知れません。

そこで今回は、マーケティングの仕事について、また業界の動向について解説し、併せて特筆するべきマーケティング会社をいくつかご紹介します。

1.マーケティングの仕事について

1-1.マーケティングとは?

公益財団法人 日本マーケティング協会が定めるマーケティングの定義とは、下記のようなものです

「マーケティングとは、企業および行政・医療・教育などの団体・組織が、グローバルな視点に立ち、顧客との総合理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」

マーケティングを一言でいうと、「自社の商品・サービスを、継続的に消費者に購入してもらう」ための仕組みを作ることです。とはいえ、この仕組みは一朝一夕にできるものではありません。やるべきことは、多岐に渡ります。

1-2.マーケティングの仕事とは?

まずは、自社が置かれている市場の調査です。そのためには情報収取を行い、集めたデータの分析が必要です。市場にどのようなニーズがあり、自社の商品・サービスがどの市場でなら売れるのか、またターゲットとする顧客は誰か、を見極めるのです。

データには定量データと、定性データとがあり、両方の収集と分析が欠かせません。定量データは数値化されるデータを指し、政府やリサーチ会社が提供する統計データが主流です。一方、定性データは数値化できない、心理的で感覚的な判断が必要なデータです。「この商品のどこが気に入ったのか」や、「どうしてこの店を利用するのか」など、数値では表せない情報です。消費者にアンケートを行って意見を求める手法ですが、消費者の購買意識を分析するデータとして活用されます。

次に、データを収集し分析した結果をもとに、仮説を立て、売るための戦略を設定するのです。マーケティングの基本的な概念に、「4P」という考え方があります。4Pとは、「自社が提供する製品=Products」、「製品の価格=Price」、「販促や広告などのプロモーション=Promotion」、「流通=Placement」の頭文字を取ったものです。一番イメージしやすいのが、プロモーションでしょうが、これはマーケティングの一部に過ぎません。市場とターゲットを見定めて製品やサービスを生み出し、適性な価格を設定し、自社と製品を効果的に告知し、ベストな方法で消費者に届ける。この一連の流れを構築することが、「市場創造のための総合的活動」であり、マーケティング戦略です。

戦略を立案したら実行に移しますが、効果を定期的にチェックし、効果が認められなければ改善していきます。「計画=Plan」、「実行=Do」、「評価=Check」、「改善=Act」を繰り返し、効果を出していく手法で、それぞれの頭文字を取って「PDCAサイクル」と呼びます。

マーケティングの仕事は、すぐに結果が出るものではありません。以上のような作業を何度も重ねて、自社やクライアントの製品やサービスの価値を最大化することなのです。

2.マーケティング業界の最新動向

マーケティング業界は、時代の変遷とともに進化してきました。インターネットとデジタルデバイスの普及により、企業と消費者との接点も増えています。前述したように、マーケティングとは「自社の商品・サービスを、継続的に消費者に購入してもらう」仕組みを作ることです。これを言いかえると、「企業と消費者とが良好な関係を築くこと」ということになります。これを実現するために、キーとなるのが「デジタルマーケティング」です。

デジタルマーケティングとは、企業が自社や機関が保有するデータを利用してマーケティング活動を行い、自社製品やサービスを消費者に届ける手法です。これまでマーケティングの世界では、消費者を属性により分類し、セグメントごとにデータを管理してきました。しかし昨今のデジタル化の波に伴い、WEBやメール、広告、SNSなど、企業と顧客とが接触する機会は増え、顧客個人のデータもリアルタイムで、収集できるようになりました。これにより企業側は、広告やメール、DM、イベントなど、複数のチャネルを使い分けて、確度の高いマーケティング施策を行うことができるようになったのです。

株式会社矢野経済研究所は、2019年11月に、国内のDMP/MA市場を調査※1し、市場の状況や将来の展望について公表しています。因みにDMP(Data Management Platform)とは、複数の販売チャネルにおける顧客の購買データを、収集して分析することにより顧客の特徴をつかみ、広告やメールなどのマーケティング戦略を最適化するシステムのことです。

調査によると、2018年のDMP市場規模は107億円、2019年には133億円と拡大しています。今後もこの傾向は続き、2024年のDMP市場は390億円に達するとの予測が出ています。

※1株式会社矢野経済研究所

国内のDMP/MA市場を調査2019

https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2280

3.代表的なマーケティング会社のご紹介

ここからは、マーケティング会社を何社かご紹介します。

会社をピックアップする場合、会社の規模や資本金、売上高など、指標はいくつかあります。今回は少し違った角度から、マーケティング企業を眺めてみることにしました。

「働きがいのある会社」ランキングをご存知でしょうか。

Great Place to Work Institute Japan は毎年、アンケート結果をもとに、一定水準を超えた企業を「働きがいのある会社」として発表しています。アメリカでは、このランキングにノミネートされることが、一流企業の証(あかし)とされています。

2020年版※2のランキングを見ると、マーケティング会社およびデジタルマーケティング会社がいくつか上位にランキングされています。大規模部門(従業員数1000名以上)、中規模部門(従業員数100~999名)、小規模部門(従業員数25~99名)の3部門に区分されており、ここではそれぞれの部門でランキングされている企業をご紹介します。

※2 Great Place to Work Institute Japan

2020年版「働きがいのある会社」

https://hatarakigai.info/ranking/japan/2020.html#modal-l-14

3-1. 大規模部門(従業員数1000名以上)

第1位「セールスフォース・ドットコム」

クラウドテクノロジーを駆使したアプリケーションと、クラウドプラットフォームを展開している同社。CRMツール「Salesforce」を販売しており、世界的なシェアを誇ります。

デジタルマーケティング業界において、押しも押されもせぬ存在です。

社員に対する啓蒙や意識改革にいたるまで、サステナビリティというコンセプトを主眼にしています。企業が気候変動対策を推進できる製品、「Sustainability Cloud」を販売しました。さらには、オンライン研修システムには、SDGsに特化した研修を新設しています。

第14位「アクセンチュア株式会社」

日本では現在、7000名以上の社員が働き、経営コンサルティング、テクノロジーサービス、アウトソーシンサービスを提供しています。事業を、「ストラテジ―」、「コンサルティング」、「デジタル」、「テクノロジー」、「オペレーション」の5つの領域に分け、ソリューションとサービスを行っています。組織風土の改革「Project PRIDE」の一環として、ライブ放送番組「PRIDE TV」を配信しています。同番組では、執行役員が司会を務め、毎回ゲストを迎えて「価値を高める働き方」についてトークを展開しています。

3-2. 中規模部門(従業員数100~999名)

第15位「CUEBiC キュービック」

「インターネットメディアの価値を最大化する」をコンセプトにして、自社メディア型マーケティングを実践しています。SEOを軸とするコンテンツマーケティング、リスティング広告・SNS広告運用、リサーチからメディアの企画、コンテンツの作成を行っています。

第28位「NYLE ナイル」

デジタルマーケティングに特化した、マーケティング会社です。SEO技術やUX/UI改善、データ分析などのマーケティングノウハウを活用して、WEB・アプリ・自動車の3つの領域で事業を展開しています。四半期に一度、全社員を対象にした調査を行っています。組織・マネジメント・個人のそれぞれに項目を儲け、課題を全社で共有しています。その調査結果を踏まえ、組織開発や社員育成のための施策を改善し、社員の満足度向上を実現しています。

3-3. 小規模部門(従業員数25~99名)

第22位「PARADOX パラドックス」

マーケティングの中でも、企業ブランディングに特化して、企業価値を向上させる施策の策定と、それに付随する広報物の企画作成を行っています。「志あふれる、日本をつくる」をビジョンにすえ、社員一人一人のこころざしを明確にして全社で共有し、そのこころざしに対して周りの社員が協力できる体制を整えています。これにより、個人のやる気が高まり、仕事の成果も上がっています。

第45位「Listing+ リスティングプラス」

リスティング広告やSNS広告の運用代行、ランディングページ制作、SEO対策とコンテンツマーケティングなど、様々なマーケティングサービスを提供しています。2011年の創業以来、リスティング広告を介して100社以上の売上向上に貢献しています。部署を横断してコミュニケーションを密にし、自信をもって仕事に取り組める環境づくりを目指しています。

まとめ:マーケティングの仕事は根気のいる作業だがやりがいも十分

マーケティング職種について、仕事の内容や業界の動向、およびいくつかのマーケティン会社についてご紹介しました。マーケティングとは、商品・サービスを顧客に継続して購入してもらうための仕組み作りです。市場調査とデータ分析、その結果に基づく仮説と戦略の立案、マーケティング施策の実行と効果測定と、仕事の内容は色々とあります。PDCAを繰り返しながら、商品・サービスの価値を最大化していく根気のいる作業です。ただそれだけにやりがいも多く、今回取り上げた「働きがいのある会社ランキング」にノミネートされた会社は、いずれも自社の強みを活かして、クライアントの売上に貢献しています。マーケティング関連のみならず、営業部門においても、マーケティングというものの存在感は高まっています。これから、マーケティングの仕事につかれる方は、今回ご紹介した会社を研究して、どこに魅力を感じるか考えてみるとよいでしょう。

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