~情報の心理的インパクトをコントロールできているか~

ニュースは「文字」で書かれている。テレビに関しては、視覚に訴えるとともにニュースキャスターが読む「文章」が耳に入ってくる。

これら「言葉や映像のイメージの強さ」も、情報の判断を曖昧にする材料だ。

象徴的な事例は、「テロ」や「戦争」「紛争」「破壊活動」などだ。おそらく、イメージとしては、「サイバーテロ」よりも「爆破テロ」の方が人々に与える印象は強いのではないだろうか。

2009年7月に北朝鮮がサイバーテロを行い、米国の各省と韓国の一部大学の個人情報を盗み出したというニュースが流れた。が、その時テレビに映っていたのは、「ページを表示できません」という、ウェブのエラー時によく見る一画面のみだった。

それをみて「サイバーテロは本当に怖い」と身ぶるいした人はそこまで多くないはずだ。反対に、継続的に行われている中東紛争や、911後、世界で頻繁に起こり始めた爆破テロの、「言葉と映像」のインパクトは非常に強い。これは、ビジネスマンにも、投資家にも、大きな心理的インパクトを与える。

ただし、これも実際は、バイアスが掛かっていると考えるべきなのだ。

実際、米国の911同時多発テロの直後、ドルはパニック的に売られたものの、翌月にはそのほとんどが買い戻された。2005年にイギリスでテロが起きた時も、翌日にはほぼ全面回復したし、主要先進国から見た際の「外部紛争」であるイスラエルや中東情勢の悪化なども、その多くは短期的な売り材料としてのみ捉えられ、その後すぐに買い戻される傾向がある。

「テロ」や「紛争」は、言葉や映像の印象の強さで、大きなイメージを投資家に残すが、それが実体経済に影響を及ぼすことは、実はそうそうないのである。

通貨投資の場合、「テロ発生」というニュースが流れた場合、短期的な下落を前提に、短期で売りを入れる戦略を考えるのが定石だ。ただ、テロ発生時の下落の度合を予想するために、ファンドがどの程度買い玉を持っているかを知っているべきだ。一時的とはいえ、テロ・紛争が起きたときには「買いポジションを持っていたファンドがポジションを手じまう」動きが起こる。つまり、それまでに多くの買い玉がつみ上がっていれば下落率は大きなものになる。逆に、テロ発生以前の相場においてファンドの買い玉が少なければ、「ポジション手じまいの動き」がそこまで顕著には現れないので、下落率は限定的となるな、などと考えたりできる。

また、テロが起きた際に瞬間的に上昇するのが、安全資産としての金などだ。そして、金の価格に連動した通貨であるオセアニアの通貨が買われたりし、通常ドル/円で取引を行っている方も、こういった特別な状況になったらコモディティ通貨に目を向けたりもする。

こういう風に、言葉のインパクトに騙されず、「言語的なインパクトの強さのバランス」を自分自身で、自覚して取っていかないと、利益には繋がらない。

先の北朝鮮のサイバーテロが今後、どこか爆破テロよりも大きな影響を及ぼすことも、もしかしたらあり得るのかもしれない。

そういう可能性を、常に頭の片隅に残しておくべきなのである。

コンテンツマーケティングを成功に導く3つのステップ