投資家にとって情報収集にかける時間は非常に大切である。多くの投資家は本業を持っていて、当然それをおごそかにするわけにはいかず、その合間を縫って投資で資産を増やそうとしている。本当は時間があればあるだけ、注目する企業のことを調べていたいだろうし、いろんなレポートを読み漁りたいだろう。ただ、そうやって情報収集に時間をかけたがる投資家は、往々にしてまけやすい。それは、情報を取り扱うのでなく、情報に扱われているサイドにいるからである。勝つ投資家はサイバースペースに存在する膨大な数の情報に振り回されるでなく、その情報の波のポイントを見極め、「使う」ことを意識している。
この理論に説得力を持たせるためには、情報と相場の関係を説明する必要がある。まず相場は、情報によって上下する。トウモロコシ畑で大雨が降ったという「情報」があれば、供給ひっ迫から価格は上昇する。ただ、ここで確認すべきは「雨が降った」ということが、事実であろうが無かろうが関係ない、ということである。
たとえば、100人の市場参加者がいると仮定して、そこに情報Aが投入されたとしよう。情報Aの内容が「事実であるかどうか」は、価格変動にはほとんど関係しないのだ。投資家は、このように、情報をある種ドライに見ていく必要がある。
投資家として、「相場」と「情報A」の関係で注意すべきことは、「市場参加者100人中、いったい何人が【情報A】を知り得るだろうか」ということなのだ。
情報Aの内容が、事実で、かつ非常に重要なことだとしても、例えば100人中1人が知り得ただけでは、おそらく相場には何ら変化はない。その一人に価格操作力(莫大な資金)があり、なおかつその市場の流動性が欠如していれば起こり得ないことではないが、可能性としては非常に低い。
また逆に、情報Aが多くの人に知られたのであれば、そのインパクトはいやおうなく大きくなる。それが、重要なことであってもなくても、市場参加者の一人一人の資金規模が小さくても、ある方向に思惑が集中すれば、ちりも積もれば山となり、それは価格決定力になっていく。
つまり、「その情報を知る」人数を意識しながら、情報を取り扱っていく必要がある。たしかに、無料で購読できる経済・投資レポートはネット上にいくつも存在する。また、業者の口座を開いている人であれば、その業者から、様々に加工された非常に膨大な情報を見ることもできるだろう。
だがそこでも、何十枚もあるレポートに目を通し、数々の市場とアナリストレポートを総合的に判断し投資判断の材料にする強靭な投資家が何人いるだろうか、と考えるべきだ。
一般的に言って、そういう投資家は少ないと考えるべきだ。それよりも、加工の施されておらず、中立性が守られ、かつ多くの人の耳に入る「一次情報」を最優先抽出情報に設定し、それを扱う技術とコツを知っておくことが重要なのである。毎日それを眺めてみても時間はすぐに過ぎて行ってしまう。図表化して、その特徴を把握しておくことで、明確な情報を短期間で得られるようにしておきたい。
ネットからの情報抽出にもコツがある。世には多くの有名報道機関があり、そのネット版は一日に膨大な数のビュー数があるだろう。逆に言うと、これは「適当に検索している」結果ともいえる。報道機関にも特徴があるのだ。たとえば、株式投資家が国内の企業関連ニュースを見たい時は、ロイターがいいかnikkeinetがいいか。どちらでもいいと言えばそれまでだが、抽出は時間と体力が関係してくるので、それぞれの報道機関の特徴を知っておいた方がいい。